通常、成年者が財産に関する法律行為をおこなう場合、原則的に親権者が未成年者の法定代理人となります。しかし遺産分割協議をする場合、親権者である父又は母と未成年者との間で利害が対立する場合(これを利益相反行為といいます)には、親権者が法定代理人になることはできません。それでは、認知症等になり判断能力がなくなった配偶者と子が相続した場合の遺産分割手続きはどうなるのでしょうか?

目次

1.成年後見人を親族とした場合に特別代理人が必要となるケース
2.複数の成年後見人の選任は可能か?
3.複数人選任を認めた理由とは?

1.成年後見人を親族とした場合に特別代理人が必要となるケース

成年被後見人である配偶者(認知症)と子が相続人のケースで配偶者の成年後見人がその長男である場合長男も相続人であるから利益が相反するので配偶者には特別代理人の選任が必要となります。

2.複数の成年後見人の選任は可能か?

成年後見人も未成年の後見人も複数の後見人も選べます。

※未成年の後見人について、以前は、教育・福祉面について後見人間で対立があるのは子にとって好ましくないということから未成年後見人は1人と規定されていました。しかし、子への虐待防止と子の権利利益を擁護する為、この規定は削除され、親権の停止制度を新設し、未成年後見人に複数の個人や法人を選任できることになりました。(平成24年4月施行)

3.複数人選任を認めた理由とは?

従前は複数の後見人を選んでしまうと、これらの人たちの間で意見の対立や混乱が生まれた場合に後見事務が滞ってしまうから、後見人の数は1人に制限されていました。
そこで、家庭裁判所は複数の後見人間での対立や混乱を避けるために各後見人の権限に関する定め(※職権で取り消しできる)、または全ての後見人が共同して権限を行使しなくてはならないという定めを職権で設定できるように改正しました。例えば、後見人の1人を親族にして、もう1人を法律家や福祉の専門家にするなど、複数の後見人が認められると本人の手厚い保護が図れるます。

 

[裁判所ホームページ「特別代理人選任(親権者とその子との利益相反の場合)」より]

親権者である父又は母が,その子との間でお互いに利益が相反する行為(これを「利益相反行為」といいます。)をするには,子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければなりません。また,同一の親権に服する子の間で利益が相反する行為や,未成年後見人と未成年者の間の利益相反行為についても同様です。
利益相反行為とは,例えば,父が死亡した場合に,共同相続人である母と未成年の子が行う遺産分割協議など,未成年者とその法定代理人の間で利害関係が衝突する行為のことです。

まとめ

最近取り扱った事例で、「親が事業をしていたのですが、認知症になってしまい事業継続できず自宅・事務所を売却して自己破産する。」という案件です。破産管財人の弁護士と特別代理人とで手続きしていくことになりますが、言葉に言い表せないものがあります。ここの所言い続けていますが、「事前の対策が重要です!

本情報は、法律・税務・金融などの一般的な説明です。個別の具体的な判断や対策などは専門家(弁護士・税理士など)にご相談ください。

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