不動産を売却する理由として、「色々な事情が絡み合った問題を解決するための売却する。」というケースは少なからずあります。とくに相続が絡むと売却理由は、様々です。

Aさん(女性)は夫と義理の母と3人暮らしです。子供はいません。Aさんと姑は、仲が悪く夫が同居していなければ一緒に生活することは難しい状況です。そんな中、夫が病に倒れ亡くなってしまいました。夫には、兄弟がいます。姑は長男が亡くなり体調を崩してしまいましたが、。Aさんは、精神的にも肉体的にも既に限界を超えていました。そんな状況でも長男の嫁として義母の面倒を看なければならないのでしょうか?

Aさんは、結局相続された不動産を売却して、夫側との親戚関係もすべて断ち切ることを選択しました。とは言っても、夫が亡くなったから自然に親族関係が終了するわけではなく、手続きをしなければなりません。
具体的には、どのような手続きになるのでしょうか?

目次

1.姻族関係と扶養義務とは?
2.特別の事情とは?
3.「姻戚関係終了届」とは?

1.姻族関係と扶養義務とは?

「夫が死亡、扶養していた姑の扶養義務は誰になるのでしょうか?」

Aさんが、姑と養子縁組をしていなければ、Aさんは姑の直系血族ではなく、もちろん兄弟姉妹でもないので、原則として扶養義務を負うことはありません
しかし、特別の事情があるときは、3親等内の親族が扶養義務を負うこともあります。(民法877条)。

【用語】
※1 血族
血族とは、血のつながりのある人を指します。血族には2つあり、自然血族と法定血族とがあります。
自然血族とは、血のつながりのある親族のことを指し、自身の実父や実母、実の祖父母、兄弟姉妹などがこれにあたります。
法定血族とは、養子縁組をした養子と、養親や養親の血族との関係のことを指します。

※2 姻族
姻族とは既婚によって生じた親族
を指します。いわゆる、義理の親子・兄弟姉妹・自身の配偶者の血族のほか・兄弟姉妹の配偶者・子や孫の配偶者なども含みます。

※3 親族
親族とは6親等内の血族(血縁関係のある人)、配偶者および3親等内の姻族(配偶者の血族)のことです。姻族の親等は配偶者を基準にするので、姑は配偶者から見て1親等の姻族となります。

2.特別の事情とは?

①姑に直系血族(子や孫)や兄弟姉妹がいないなど特別な事情があるときは、家庭裁判所から、配偶者が姑の扶養を命じられる場合があります。
②「同居の親族」は互いに助け合う義務があるので(民法730条)、配偶者である者が姑と同居している場合、姑に対して互助義務を負わなければならない。

第877条(扶養義務者)
1.直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
2.家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。
3.前項の規定による審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その審判を取り消すことができる。
[WIKIBOOKS より]

3.「姻戚関係終了届」とは?

夫の死後、市区町村の担当窓口に「姻族関係終了届」を提出すれば、姑との姻族関係は解消し親族関係もなくなるので、互助義務も扶養義務も負うことはありません。
そして、姻族関係を終了させても、夫の相続人であるという立場に変更はなく、夫の遺産を相続することはできます。

※姻族関係を終わりにするかどうかは、本人の意思で自由に決めることができ、配偶者の血族の了解は不要。
家庭裁判所への申立も不要で、届出を提出するだけで手続きは完了する

まとめ

今回のようなケースは、今後増えていくと思います。年齢順に相続が発生すれば、揉めることもありませんが、一般的に女性の方が長生きします。私も含めて、「自分自身が長生きすることと、妻を大切にすること、そして、生前に早めに準備をしておくこと。」が大事です。

 

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