土地売買の取引を行う場合、取引対象たる土地が実際に現地で、どのような位置にどのような形状や広がりをもって存在しているのかは分かりません。法務局には、土地の区画(筆界)を明確にするための資料として「地図」が備え付けられることになっています。
法務局に備え付けられている土地に関する地図・図面は、「14条地図」・「地積測量図」・「公図(地図に準ずる図面)」・「地役権図面」です。

ここでは、「14条地図」と「公図」の2点に絞ってまとめてみました。

目次

1.「14条地図(不動産登記法第14条地図)」とは?
2.「公図(地図に準ずる図面)」とは?

1.「14条地図」(不動産登記法第14条地図)とは?

「地図」といえば実務では公図のことを指すことが多いのですが、不動産登記法上の「地図」とは、一定の精度を有するものです。不動産登記法上「地図」というときは、国土地理院が決めている国家基準点(三角点)を基準にして測量法に境界を確定した一定の精度を有するもので「14条地図」と呼ばれています。「14条地図」が備え付けられていれば、これを利用して、土地の現地における位置、形状、面積、隣地との関係等を確認することができます。万一土地の形状が変わったとしても境界の復元をすることができます。なお、境界杭の復元のデータにも使える「14条地図」ですが、、現実的には14条地図は十分な整備がなされていません(都市部の人口密集地域では20%程度にすぎない)。

(1)「14条地図」の精度
国土交通省は、平成20年2月に公図と現況のずれの程度についての調査結果を公表していますが、その調査結果によれば、現況と公図のずれの幅について、ずれが30cm以上1m未満の地域が約3割、ずれが1m以上10m未満の地域が約半数でした。

■「14条地図」の例示

■国土調査法による精度区分

■上図の活用方法
(例)ある土地の精度区分:甲2、一辺の長さ:10㍍・面積が200㎡の場合、許容される公差は?
●距離の公差:上記の公式より/0.04m + 0.01 √Sm より
0.04m + 0.01 × √10m = 0.072m
●地積の公差:上記の公式より/(0.05 + 0.01∜F)√F ㎡ より
(0.05 + 0.01 ∜200㎡ = 1.239㎡
(2)「14条地図」の種類
①法務局作成の地図 ②国土調査による地籍図(製作が新しく一定の精度があるもの) ③土地改良法の土地所在図 ④土地区画整理法の土地所在図 ⑤新住宅市街地開発法による土地所在図 など

2.「公図(地図に準ずる図面)」とは?

「公図(地図に準ずる図面)」は、不動産登記法第14条第4項の規定に基づき、同条第1項の地図(14条地図)が備えられるまでの間、これに代わって「公図(地図に準ずる図面)」として法務局に備えられているものです。
しかしながら、「公図(地図に準ずる図面)」として多くの法務局に備え付けられているのが、旧土地台帳法よって登記所に保管されていた土地台帳附属地図です。土地台帳はかつて租税徴収の目的をもって制度化されていたものですが、昭和35年に廃止されました。土地台帳附属地図は、それ以前から不動産取引に利用されており、土地台帳制度が廃止された後も、この土地台帳附属地図が現在まで利用されているわけです。
よって、そのため正確性に問題があり、十分な精度を有していません。

■「公図」の例示

正確性には欠けているとはいえ、公図(地図に準ずる図面)は筆ごとに線引きされた図面です。土地の形状や位置関係を把握するために必要な資料として一般に利用されています。

(1)「公図(地図に準ずる図面)」の種類
①土地台帳附属地図 ②国土調査の成果の地籍図(製作が古く精度が高くないもの) ③土地区画整理等の成果による土地所在図等(製作が古く精度の高くないもの)

[国土交通省/国土調査法 19条5項指定制度のご案内]参考

【参考条文】

■裁判所でも「公図は実測図と異なり、線の長さ、面積について正確を期待できないことはいうまでもないが、各筆の土地のおおよその位置関係、境界線のおおよその形状については、その特徴をかなり忠実に表現しているのが通常である」(東京高裁昭和53年12月26日)
■「公図は土地台張の附属地図で、区割と地番を明らかにするために作成されたものであるから、面積の測定については必ずしも正確に現地の面積を反映しているとはいえないにしても、境界が直線であるか否か、あるいはいかなる線でどの方向に画されるかというような地形的なものは比較的正確なものということができる」(東京地判昭和49年6月24日)

公図が土地の位置、形状、面積、隣地との関係等を示すものとしては頼りになるというのが裁判所の判断です。

まとめ

不動産に関わる問題は、「知ってる。」「知らない。」で費用も結果も大きく変わってしまうことになります。今回書いた「14条地図」或いは「公図(地図に準ずる図面)」は法務局に行けば、誰でも取得できます。
隣地間で軒が越境しているケース。進入路の幅を勝手に拡幅して使用してして所有を主張するケース。排水路やブロック塀の所有を主張するケース。など。本当に色々なケースがあります。特に境界が未確定だと売却や相続が発生した際にスムーズに進めることができません。特に相続で取得した土地がある場合には、公図をとって確認することをお勧め致します。

 

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