事業用定期借地などの案件で、借地人(借主)が建物建築資金の融資を受けようとする場合に金融機関が建物に抵当権を設定する際、担保価値が減らないように地主から承諾書を当然のように請求してくる金融機関があります。弊社が、地主側の媒介業者として携わった時は、金融機関の担当者に対して承諾書を提出しない方向で手続きしました。

理由は、以下のとおりです。

目次

1.なぜ、金融機関が承諾書を必要とするのか?
2.承諾してしまうと契約解除ができなくなる?
3.建物だけの設定するよう協議は可能!!

1.なぜ、金融機関が承諾書を必要とするのか?

金融機関は、借主が建てた建物地上権(他人の土地に建物等を所有するために土地を使用する権利)には、抵当権が設定できます。しかし、土地を借りる賃借権には抵当権を設定することができません。この場合、借地権上の建物に抵当権が設定したときは、抵当権の効力が借地権(賃借権)にも及び、建物が競売になった場合、原則として借地権(賃借権)は、競落人に移転します。しかしながら、競落人は借地権の譲渡に関し、地主の承諾を得ていなければ借地権の譲渡を地主に対して対抗できないため、承諾を得るためには裁判所の許可が必要となります。これでは、金融機関にとって、円滑に抵当権を実行して資金回収ができなくなる可能性があるため、建物に抵当権等の担保権設定をする際に、地主から競売により借地権が第三者に譲渡されることの承諾書を取り付けたいからです。

2.承諾してしまうと契約解除ができなくなる?

通常、借主(借地人)が地代の不払いや無断転貸等した場合には、地主から契約解除されます。借地契約が解除された場合、建物に抵当権を設定している金融機関は困ります。そのために、金融機関は、地主に対して賃料不払い等の解除事由が発生したときは、借地契約を解除する前に必ず金融機関に対し通知することの承諾書を要請してきます。承諾書を金融機関に対し提出した後、不払い等の理由で地主が金融機関に対し通知せずに契約解除した際は、金融機関から損害賠償を請求されてしまいます。

3.建物だけの設定するよう協議は可能!!

必ず、金融機関に承諾書を差し入れしなければならないことはありません。地主にとっては、そんなリスクを抱えないと金融機関から借り入れできないテナントに対して、心配になってしまう地主もいるのではないでしょうか?場合によっては、拒否できます。通常、① 借地上の建物に抵当権を設定すること。② 抵当権が実行された際は、借地権も一緒に譲渡されること。以上の内容で承諾書を金融機関に対し差し入れるケースが多いのではないでしょうか?

まとめ

金融機関から承諾書の差入を求められた場合は、承諾書の内容を事前に確認した上で、十分に説明を受けてから判断しなければなりません。一歩間違えば、言葉は悪いですが、「地主は、金融機関のための借地人の連帯保証人」になってしまいます。

[新日本法規「事例式 不動産契約書作成マニュアル」より]

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