「自己資金で購入できるお金は持っているけど、住宅ローン控除を使った方がいいのか?」という、大変羨ましい相談を受けることがあります。さすがに、新築の場合は借入をする方が多いのですが、中古住宅(※要件有り)の購入を検討されている方から相談を受けるケースが最近増えてまいりました。

今回は、住宅ローン控除(正式には、「住宅借入金等特別控除」)の適用を受けていた方が、まとめて数年分を繰上返済しようとする場合に注意点があります。それは、どういうことでしょうか?

目次

1.「住宅ローン控除」制度の概要と適用要件とは?
2.繰上返済後の返済期間がポイントとは?

1.「住宅ローン控除」制度の概要と適用要件とは?

[住宅ローン控除制度とは]

個人が借入金等をもって、一定の新築または既存の住宅用家屋の取得または増改築等を行い、平成33年12月31日までに居住用にした場合は、居住を開始した年以降10年間にわたり各年分の所得税から一定額が控除されます。また、所得税額(この特例による控除額)よりもこの特例による控除額の方が多いときは、その残額を翌年分の住民税から控除することができます。いったん居住した後であれば、転勤等のやむを得ない事情で居住しなあくなくなっても、その後再入居した場合は、再入居年以降の各適用年から再適用が受けられます。

[適用要件]
1)取得者の要件

・適用を受ける年の合計所得金額が、3,000万円以下であること
・年末に住宅ローン等の借入残高があること
・取得後6ヶ月以内に入居すること 等

2)住宅ローンの要件

・自己居住用の住宅とその敷地に対するローンであること
・償還期間(返済期間)が10年以上のローンであること
・勤続先等からの借入の場合は、年利率0.2%(平成29年1月1日以降居住のとき)以上であること 等

3)取得する住宅の要件

・床面積が50㎡以上であること
・床面積の2分の1以上が居住用部分であること
・既存住宅の場合は、次のいずれかに該当すること
築後20年(耐火建築物:25年)以内の建物
② 地震に対する一定の安全基準に適合する建物(既存住宅売買瑕疵担保保険に加入している一定の建物を含む)
③ 地震に対する安全基準に適合しない既存住宅で、取得の日までに耐震改修工事の申請等をし、入居日までにその工事が完了している等の要件を満たしている建物
④ 増改築(一定の耐震改修工事を含む)の場合は、増改築後の床面積が上記面積要件を満たし、その工事費が100万円(補助金等を除く)を超える建物 等

[不動産に関わる税金の基礎知識(平成30年度版)より]

2.繰上返済後の返済期間がポイントとは?

繰上返済を行うことによって、当初の契約による返済期間が10年未満となってしまう場合には、住宅ローン控除の要件を欠くことになるため、繰上返済を行った年以降は、住宅ローン控除の適用を受けることが出来ません。それに対して、繰上返済を行っても返済期間が10年以上である場合は、住宅ローン控除の要件は充足しているため残存返済期間が10年未満となっても住宅ローン控除の適用を受けることができます

■上図Ⅰ.のように、残存返済期間が15年の時に8年間分の繰上返済を行った場合、残存返済期間が7年となってしまいますが、契約により返済期間は12年です。よって、返済期間10年以上の要件を満たしているため、住宅ローン控除の適用を受けることが出来ます。

■対して上図Ⅱ.のように、残存返済期間が15年の時に12年間分の繰上返済を行った場合、残存返済期間が3年となってしまい、契約により返済期間は8年となります。よって、返済期間が10年未満で要件をかくことになるため住宅ローン控除の適用を受けることが出来ません。

まとめ

当初の返済期間から10年を差し引いた残存期間の繰上返済を行った場合は、10年未満となってしまい住宅ローン控除の適用が受けられません。
(例)返済期間15年の場合、5年(15年-10年)を超えると返済期間が10年未満となるため適用を受ける事ができません

あと2ヶ月で今年も終わりです。住宅ローン控除分は、年の初めに指定口座に入金されるので何となく嬉しいものです。4月頃までは、固定資産税・都市計画税・車を持っていれば自動車税・子供の授業料等お金が動く時期です。確かに金利負担は重いのですが、それを優先しすぎて手持ち資金を出し切ってしまうと本末転倒になってしまいます。

何事も計画的に行うことが重要です。

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