不動産の取引では、価格が高額になります。売買に向けた交渉の中で購入希望者から単に口頭だけで売主或いは売主側仲介業者に対して話を進めることは殆どの不動産業者は行いません。その場合は、購入したい物件を特定した上で購入機能金額を記載した買付証明書をもって交渉をします。

買付証明書を記載して頂く際に、よく「買付証明書を書いたら、必ず契約しなければいけないのでしょうか?」という質問を頂くときがあります。あるいは、売主に対して買付証明書と提出し、売主からは売渡承諾書を受領し、契約に向けて詳細な内容の打合せも済んだ後になって、一歩的に契約締結を中止される方もいます。

今回は、買付証明書売渡承諾書についてまとめてみました。

目次

1.買付証明書とは?
2.売渡承諾書とは?
3.2つの書類の効力は?
4.契約締結の準備段階にある場合には要注意!

1.買付証明書とは?

買付証明書とは、購入希望者から購入の金額などの条件等を、売主に対してこの条件で買付けることを証明する旨を記載した書面のことをいいます。また、他の購入希望者を排除して自分だけで交渉を行って欲しい旨の意思を表した書面ともいえます。

2..売渡承諾書とは?

売渡承諾書とは、売主から売却の金額などの条件等を、買主に対してこの条件で売り渡すことを承諾する旨の記載がなされた書面のことをいいます。

3.2つの書類の効力は?

一般に、買付証明書と売渡承諾書のやりとりがあっただけで、直ちに売買契約が成立したということにはなりません。その理由は、売渡承諾書は、あくまで売却しても良いという意思を表明した書面にすぎず、買付証明書も購入希望を表明したものにすぎないため、「売主と購入希望者双方の意思として売買の合意が確定的に認められるとはいえない。」ということからです。
売買契約が成立したとするためには、①物件の特定 ②売買代金額 ③支払時期、④引渡・移転登記の時期などの条件など売買契約書に記載される内容が、双方で確定し合意がなされていることが必要となります。

4.契約締結の準備段階にある場合には要注意!

売買契約が成立していなくても、契約締結の準備段階にある場合には、当事者は契約の成立に向けて誠実に努力すべき信義則上の義務があるため、当事者の一方が、信義則に反するような形で突然契約締結を拒否するような場合には、契約締結上の過失として損害賠償を請求される可能性があるようです。

 ■福岡高判平成7.6.29では、分譲マンション用地の売買につき、売買契約書等の作成と代金決済を行うことや地鎮祭の日取りまで確認された後に、買受希望者が契約締結を拒んだ事案において、売渡予定者から買受希望者に対する損害賠償請求が肯定されています。

■大阪高判平成2.4.26では、買付証明書と売渡承諾書が取り交わされていた事案において、売買契約が成立したかどうかが、争われました。
裁判所は…。
⑴買付証明書は、不動産の買主と売主とが全く会わず、不動産売買について何らの交渉もしないで発行されることもあること。
⑵一般に、不動産を一定の条件で買い受ける旨記載した買付証明書は、これにより、不動産を買付証明書に記載の条件で確定的に買い受ける旨の申込みの意思表示をしたものではなく、単に、不動産を将来買い受ける希望がある旨を表示するものにすぎないこと。
⑶買付証明書が発行されている場合でも、現実には、その後、買付証明書を発行した者と不動産の売主とが具体的に売買の交渉をし、売買についての合意が成立して、始めて売買契約が成立するものであって、不動産の売主が買付証明書を発行した者に対して、不動産売渡の承諾を一方的にすることによって、直ちに売買契約が成立するものではないこと。
⑷不動産取引業界では、一般的に知られ、かつ、了解されている」として、売渡承諾書が送付されていても、本件不動産の売買契約は有効に成立しない、と判断しています。

[公益社団法人 全日本不動産協会 ホームページより]

まとめ

契約の準備段階に入っているのに「まだ、買付の段階だからキャンセル出来ますよね?」と言われる方がたまに出逢います。自分勝手な業者のお客様に多いのですが…。

また、不動産業界特有の分かりづらさという理由もあると思います。今後も「見える化」をテーマにわかりやすく情報を提供して所存です。

 

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