不動産の売却をお手伝いする場合に、不動産の所有権移転登記(以下「相続登記」という。)が未了の方がいます。やらない理由は、① 相続手続きが煩雑で面倒 ② 相続登記に費用がかかる。からです。
そもそも、相続登記自体は、「原則として相続による所有権移転登記(相続登記)を行うことになっていますが、義務ではない。」ため、相続税がかからなければ手続きをやらない方が多いのではないでしょうか?
中には、次のような理由の方もいました。その方は、高齢の女性です。「物騒な世の中、女の名義にしておくと業者になめられてしまうから亡くなった父親名義のままに敢えてしている!?」というものです。

今回、平成30年度の税制改正により、「相続による土地の所有権移転の登記について登録免許税が、一定の要件を満たしていれば免除される。」ことになりました。この制度について法務省ホームページを参考にしながら、実際の業務の中で「相続登記がされていなかったために、売却手続に苦労した事例。」もまとめてみました。

目次

1.相続登記未了土地の実態
2.相続登記がされていなかったために、売却手続きに苦労した事例
3.相続登記の登録免許税の免税措置について

1.相続登記未了土地の実態

法務省のホームページより「不動産登記簿における相続登記未了⼟地調査について(2017年6月)」によると「最後に所有権の登記がされてから50年以上経過しているもの」が大都市地域において6.6%,中小都市・中山間地域において26.6%となっています。

上記のデータに加えて、東日本大震災のからの復興に関連して「相続登記が放置されているため,所有者の把握が困難となり,まちづくりのための公共事業が進まない。また,相続登記の未了は,適切な管理がされていない空き家が増加している大きな要因の一つである。」との指摘もあり、国側も本格的に取り組んできました。

2.相続登記がされていなかったために、売却手続きに苦労した事例

不動産を購入する方は、当たり前ですが「今購入して名義を自分名義に出来る土地」を購入します。以下の事情がある場合には、誰も購入することができません。当然に売却することもできません。

【手続きに時間がかかるケース】
① 相続人の所在が不明。
② 相続人が認知症で自分で手続きできない。
③ 公共事業用地として購入したいが、所有者不在で手続きが出来ない。

【手続きに時間と費用がかかるケース】※相続人の調査だけで、高額な調査費用がかかってしまう
① 長年相続登記が放置され続け、相続人が数百人になっている。
② 相続人が海外に在住している。

3.相続登記の登録免許税の免税措置について

【要件】
個人が相続(相続人に対する遺贈も含みます。)により土地の所有権を取得した場合において,当該個人が当該相続による当該土地の所有権の移転の登記を受ける前に死亡したときは,平成30年4月1日から平成33年(2021年)3月31日までの間に当該個人を当該土地の所有権の登記名義人とするために受ける登記については,登録免許税を課さないこととされました。つまり本来、土地の価額に対して0.4%(1000分の4)の税率がかかるところ免除となります。

[免税措置のイメージ]
免税を受けることができる相続登記のイメージは、以下のとおりです。

登記名義人となっている被相続人Aから相続人Bが相続により土地の所有権を取得した場合において、その相続登記をしないまま相続人Bが亡くなったときは、相続人Bをその土地の登記名義人とするための相続登記につては登録免許税が課税されません。

(注)上記のような場合に、必ずしもCがその土地を相続している必要はなく、例えばBが生前にその土地を第三者に売却していたとしても、1次相続についての相続登記の登録免許税は課税されない。

[法務省ホームページより]

まとめ

所有者が不明の場合には、「相続財産管理制度」の利用も考えられますが、家庭裁判所への申立が必要です。弁護士などに依頼する場合によっては、相当の費用と時間がかかります。また、管理人が確定するまでの管理(不法投棄・放火などの対策)・固定資産税の負担問題など問題が山積みになっていまいます。

所有する考えがない場合には、早期に相続登記を完了し、売却を進めていくことが最善だと思います。相続登記が未了の土地がありましたら、この制度を活用を検討して下さい。

 

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