今まで老夫婦で暮らしていた家を、相続をきっかけに不動産を売却して老人ホームに入所するか、あるいは子供と同居するケースが増えています。そんな中で必ずと言っていいくらい「不動産を売却した場合は、1年間だけ年金が減額されるのでは?」との質問を耳にします。結論から言いますと「原則として不動産を売却したからといって減額されることはありません!」

目次

1.年金の金額が変わらない理由とは?
2.金額が変わるのは、国民健康保険や後期高齢者医療制度の保険料!
3.国民健康保険料の基礎となる所得額とは?
4.障害基礎年金は、減らされる場合がある?

1.年金の金額が変わらない理由とは?

こちらは、それまで払ってきた納付期間、および、報酬に比例して納付してきた金額によって給付額が決まります。労働をしてもらっている給料があるかないかが減額条件。
労働報酬ではない不動産売却の収入は減額条件には該当していません。つまり受給終了どころか減額にもならないのです。

2.金額が変わるのは、国民健康保険や後期高齢者医療制度の保険料!

国民健康保険料は、加入者全員が負担する「医療分保険料」及び「後期高齢者支援金分保険料」と40歳以上65歳未満の加入者(介護保険第2号被保険者)が負担する「介護分保険料」の3つの区分で構成され、それぞれ所得割額、均等割額、平等割額を算出し、その合計額が年間保険料となります。国民健康保険料は、前年の総所得金額を元に計算されます。

【国民健康保険料(国保法第76条・第81条)】
国民健康保険料は、加入者の医療費や保健事業、国民健康保険に限らずすべての保険で高齢者の負担を支える制度のもとで、後期高齢者医療制度加入者の医療費等、40歳から64歳までの国民健康保険加入者の介護保険料に充てられる費用です。

3.国民健康保険料の基礎となる所得額とは?

国民健康保険料の「基礎となる所得額」とは、前年の総所得金額等(総所得金額及び山林所得の合計額をいいます。総所得金額には、確定申告された特別控除後の分離課税所得[譲渡・株式・先物等]も含まれます。)から基礎控除33万円を差し引いた金額です。(※障害年金、遺族年金、雇用保険、退職所得は、基礎となる所得額には含まれません。)

不動産売却による所得分増えるため、その分保険料が高くなります。後期高齢者医療制度では、原則として保険料が年金からの天引きなので、年金の受給額が減ったかのように感じてしまうのです。
これが、「不動産を売却したら、年金が減らされる?」といわれる都市伝説の原因です。
なお、保険料が高くなるのは不動産売却した年の次の年だけです。

4.障害基礎年金は、減らされる場合がある?

「20歳前傷病による障害基礎年金」は、所得による障害年金の支給制限があります。この場合は、減額される可能性があります。なお、20歳以降に初診日がある場合の「障害基礎年金」及び「障害厚生年金」には、所得による支給制限はありません。

【20歳前傷病による障害基礎年金にかかる所得制限】
20歳前に傷病を負った人の障害基礎年金については、本人が保険料を納付していないことから、所得制限が設けられており、所得額が398万4干円(2人世帯)を超える場合には年金額の2分の1相当額に限り支給停止とし、500万1干円を超える場合には全額支給停止とする二段階制がとられています。

[日本年金機構ホームページより]

まとめ

不動産に限らず、事実と異なることがあります。今後もお役に立てる情報を発信してまいります。

本情報は、法律・税務・金融などの一般的な説明です。個別の具体的な判断や対策などは専門家(弁護士・税理士など)にご相談ください。

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