市街化調整区域内に相続で農地を所有している方から、こんな相談がありました。

「農業を全くやっていないので農地法第3条の許可を得て、第三者に貸したい。その場合は、賃貸借にすべきか?使用貸借にすべきか?」ポイントは、それぞれ解約時の取り扱いについて異なります。この違いについて、どのように考えるか?がポイントです。

目次

1.「農地の賃貸借の解約」の場合は?
2.「農地の使用貸借の解約」の場合は?
3.20年以上の使用貸借期間がある場合には、要注意!

1.「農地の賃貸借の解約」の場合は?

(1)法定更新(農地法第17条)
民法と異なり、農地法第3条の許可を得て賃貸した農地は、基本的に貸付期限が終了しても、自動的に契約は終了されず、法定更新されます。(農地法第17条)

(2)解約等の制限(農地法第18条)
解約するのに都道府県知事の許可が必要な場合
解約して農地の返還をするためには、農地の賃貸借契約の解約の申入れをして、賃借人の同意を得て合意解約が必要です。なお、解約するには都道府県知事(指定都市の区域内にあっては指定都市の長)の許可が必要です。
賃借人が借りた農地を耕作しなかったり、賃料が未払いなどの信義に反した行為をした場合でも、解約するには、都道府県知事(指定都市の区域内にあっては指定都市の長)の許可が必要です。

解約するのに都道府県知事の許可がいらない場合
③ 農地を引き渡す6ヶ月前までに、賃貸人と賃借人の合意解約が成立したときは、都道府県知事の許可は必要ありません。その場合は、農業委員会に「合意解約の通知書」を連署にて提出しなければならない。
④ 賃貸借の更新をしない旨の通知が、10年以上の期間の定めがある賃貸借(解約する権利を留保しているもの及び期間の満了前にその期間を変更したもので、その変更した時以降の期間が10年未満であるものを除く)又は水田裏作を目的とする賃貸借につき行われる場合は、許可を得ずに賃貸借の解約ができます。

[農林水産省ホームページ 参考]

2.「農地の使用貸借の解約」の場合は?

① 農地の使用貸借の解約について、農地法上では特に決まりはありません。つまり、農地法第3条の許可を得て使用貸借した農地は、貸付期限が終了すれば返還されます。なお、農業委員会に解約した旨を通知する必要がある自治体もあります。
② 賃借人が死亡した場合は、使用貸借は解約され、賃借人の相続人に引き継がれることはありません。しかしながら、賃貸人が死亡した場合は、貸付期限までは解約されずに使用貸借契約は継続されます

3.20年以上の使用貸借期間がある場合には、要注意!

使用貸借の貸付期間が20年以上継続されている場合には、時効取得の可能性があります。

まとめ

太陽光発電用地として農地を扱う機会があります。殆どが相続などで農地を取得した方たちです。ほぼ100%、農業をやっておらず、誰かに耕作してもらっています。中には、「誰に耕作してもらっているかわからない。」という方もいらっしゃいました。ただただ、周辺農地に雑草などで迷惑を掛けたくないとの理由からです。しかし、耕作している方は高齢者が多く、「高齢で農業機械を入れるのも大変になり、正直やりたくない。」との本音も聞こえてきます。

所有者の方にとっては、ご先祖から受け継いだ大事な土地です。「自分が生きている間は、ご近所に迷惑がかからない状態であれば良い。」との考えから、どのような内容で貸しているのかも知らない方が殆どです。
相続した農地は、いずれ次の世代に受け継がれていきます。自分の代のことだけを考えずに、どのような契約内容での管理形態をしているかを把握し、次の世代に伝える(見える化)ことが出来るようにしておくことが大事ではないでしょうか?

本情報は、法律・税務・金融などの一般的な説明です。個別の具体的な判断や対策などは専門家(弁護士・税理士など)にご相談ください。

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