前回、農地転用のことについて書きました。太陽光発電用地として農地や山林での需要がまだまだ多いようです。ここでは、農地や山林において“太陽光発電用地”として検討する価値があるかどうかを判断する基本的な許可基準についてまとめてみました。

目次

1.農地転用制度の内容
2.農地転用の許可基準
3.山林開発許可制度の内容
4.山林の許可基準

1.農地転用制度の内容

農地を転用(農地以外のものにすることをいいます。)する場合又は農地を転用するため権利の移転等を行う場合には、原則として都道府県知事又は指定市町村の長の許可が必要です。
指定市町村とは、農地転用許可制度を適正に運用し、優良農地を確保する目標を立てるなどの要件を満たしているものとして、農林水産大臣が指定する市町村のことをいいます。指定市町村は、農地転用許可制度において、都道府県と同様の権限を有することになります。
なお、国、都道府県又は指定市町村が転用する場合には許可は不要とされていますが、学校、社会福祉施設、病院、庁舎又は宿舎のために転用する場合には、許可権者と協議を行う必要があり、協議が整った場合には許可を受けたものとみなされます。また、市街化区域内農地の転用については、農業委員会への届出制となっています。

2.農地転用の許可基準

農地転用の申請があった場合、次の(1)立地基準、(2)一般基準に基づき、許可、不許可の判断を行うこととされています。

(1) 農地区分及び許可方針(立地基準)
農地をその優良性や周辺の土地利用状況等によって次のとおり区分し、転用を農業上の利用に支障が少ない農地へ誘導することとしています。

上表のとおり、農地は5種類に分けられています。このうち農地転用の可能性が高いのが、第2種農地と第3種農地となっています。逆に可能性が低いのが、農用地区域内農地・甲種農地 そして第1種農地です。

(2)一般基準(立地基準以外の基準)
許可申請の内容について、申請目的実現の確実性(土地の造成だけを行う転用は、市町村が行うもの等を除き不許可)、被害防除措置等について審査し、適当と認められない場合は、許可できないこととなっています。

[「農林水産省 ホームページ」 参考]

3.山林開発許可制度の内容

山林は、森林法によって「地域森林計画対象民有林」の区域内か否かがポイントです。

(1)許可制の対象となる森林
林地開発許可制度の対象となる森林は、森林法第5条の規定により都道府県知事がたてた地域森林計画の対象民有林(保安林、保安施設地区及び海岸保全区域内の森林を除く。)です。
(2)許可制の対象となる開発行為
許可制度の対象となる開発行為は、土石又は樹根の採掘、開墾その他の土地の形質を変更する行為であって、次の規模をこえるものです。
ア 専ら道路の新設又は改築を目的とする行為でその行為に係る土地の面積が1ヘクタールを超えるものにあっては道路(路肩部分及び屈曲部又は待避所として必要な拡幅部分を除く。)の幅員3メートル
イ その他の行為にあっては土地の面積1ヘクタール
(3)許可権者
開発行為をしようとする者は、農林水産省令で定める手続に従い、都道府県知事の許可(自治事務)を受けなければなりません。目次3の内容を記述する

4.山林の許可基準

都道府県知事は、許可の申請があった場合において、次のいずれにも該当しないと認めるときは、これを許可しなければならないとされています

ア 当該開発行為をする森林の現に有する土地に関する災害の防止の機能からみて、当該開発行為により当該森林の周辺の地域において土砂の流出又は崩壊その他の災害を発生させるおそれがあること(災害の防止)
イ 当該開発行為をする森林の現に有する水害の防止の機能からみて、当該開発行為により当該機能に依存する地域における水害を発生させるおそれがあること(水害の防止)
ウ 当該開発行為をする森林の現に有する水源の涵養の機能からみて、当該開発行為により当該機能に依存する地域における水の確保に著しい支障を及ぼすおそれがあること(水の確保)
エ 当該開発行為をする森林の現に有する環境の保全の機能からみて、当該開発行為により当該森林の周辺の地域における環境を著しく悪化させるおそれがあること(環境の保全)

[「林野庁 ホームページ」 参考]

まとめ

農地の場合は周辺農地へ影響(日当たり、水など)・森林の場合は、木を伐採した後の土砂災害・環境保全などの影響を考慮して規制をかけています。太陽光発電バブルがはじけ、発電業者の倒産が相次いでいる昨今、安い土地を求めて太陽光発電業者・専門の不動産業者から毎日のように電話が当社にもかかってきます。地主からしてみれば、今まで二束三文で見向きもされなかったタダ当然(固定資産税負担分だけマイナス?)の土地が処分できれば「幾らでもいい売却したい。」と思っています。また、太陽光をやりたい事業主は、賃貸マンションなどの投資より「パネルなどの資材がピークより相当安く調達できる。しかも、20年安定した収入が入る。」ということで事業意欲が旺盛です。

今回書いた内容は、地主の方向です。太陽光の場合は、どうしても売電できるかどうかの許認可の関係で、契約から引渡まで1年以上かかるときもあります。太陽光発電業者にしか売却が難しい土地の地主は、「お荷物だった土地が売却できる。これで肩の荷が下りる。」と考え時間がかかっても結論が出るまで待っています。しかし、売買契約しても売れるかどうか分からない状態で長い間待たされ、結果許可が下りなくて白紙になってしまうと精神的なダメージは大きいはずです。実際は、このようなケースは多い。

そうならないためにも、地主自身が、自分の土地の状況を知っておく必要があるのではないでしょうか?

本情報は、法律・税務・金融などの一般的な説明です。個別の具体的な判断や対策などは専門家(弁護士・税理士など)にご相談ください。

オフィスSANOは、相続財産(金融資産 & 不動産)の問題はもちろんのこと、不動産問題について『知っていると得すること』・『知らないと損すること』に重点をおいて情報を発信してまいります。
どうしたらよいか分からない時は、不動産問題解決ナビゲータ オフィスSANOまでお気軽にご相談