一般的に「手続」は、分かりづらく面倒臭い内容のものが多い。特に条文などは、独特の言い回しが多いものです。特に不動産や相続に関する手続きは頻繁に行う手続きではないので、「意味がよく分からなかったから、言われるがままに印鑑を押した事は覚えている。」という方が多い。今回は、「延納から物納への変更」についてまとめてみました。
目次
1.制度の概要
2.延納を受けるための要件
3.担保の種類
4.延納の許可までの審査期間
5.延納から物納への変更 ※「特定物納制度」
1.制度の概要
国税は、金銭で一時に納付することが原則です。しかし、相続税額が10万円を超え、金銭で納付することを困難とする事由がある場合には、納税者の申請により、その納付を困難とする金額を限度として、担保を提供することにより、年賦で納付することができます。
これを延納といいますが、この延納期間中は利子税の納付が必要となります。相続税が財産課税であるという特殊性から、相続人自身の将来の収入や将来における遺産の売却収入等により、長期間の分割納付により納税しなければならない相続人等の為に、相続税の延納制度が認められています。
2.延納を受けるための要件
次に掲げる全ての要件を満たす場合に、延納申請をすることができます。
(1) 相続税額が10万円を超えること。
(2) 金銭で納付することを困難とする事由があり、かつ、その納付を困難とする金額の範囲内であること。
(3) 延納税額及び利子税の額に相当する担保を提供すること。ただし、延納税額が100万円以下で、かつ、延納期間が3年以下である場合には担保を提供する必要はありません。
(4) 延納申請に係る相続税の納期限又は納付すべき日(延納申請期限)までに、延納申請書に担保提供関係書類を添付して税務署長に提出すること。
①相続税額が10万円を超えること。
※期限内申告書、期限後申告書、修正申告書の提出により又は更生・決定に基づき納付すべき相続税額が10万円を超えている場合、その納付すべき相続税額について延納が認められる。
②金銭納付を困難とする金額の範囲内であること。
※納期限迄に金銭で一時に納付が困難な事由がある場合、その納付を困難とする金額の範囲内で延納が認められる。
③申請書を納期限迄に提出すること。
※延納は、税務署長が一方的に許可できず、納税者の申請があって初めて要件を審査し、許可(却下)されるものである。この延納申請書は、延納の許可を受けようとする相続税の納期限(又は納付すべき日)迄に、納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。
④延納税額に相当する担保を提供すること。
※原則として、延納税額に見合う担保の提供が必要となる。
※担保は、国債・地方債・土地・保険を付した建物・税務署長が確実と認める有価証券等に限定される。尚、担保の提供に関する書類は、前述の延納申請書の提出期限迄に延納申請書に添付して提出しなければならない。
3.担保の種類
延納の担保として提供できる財産の種類は、次に掲げるものに限られます。
なお、相続又は遺贈により取得した財産に限らず、相続人の固有の財産や共同相続人又は第三者が所有している財産であっても担保として提供することができます。
(1) 国債及び地方債
(2) 社債その他の有価証券で税務署長が確実と認めるもの
(3) 土地
(4) 建物、立木、登記される船舶などで、保険に附したもの
(5) 鉄道財団、工場財団など
(6) 税務署長が確実と認める保証人の保証
※税務署長が延納の許可をする場合において、延納申請者の提供する担保が適当でないと認めるときには、その変更を求めることとなります。
4.延納の許可までの審査期間
延納申請書が提出された場合、税務署長は、その延納申請に係る要件の調査結果に基づいて、延納申請期限から3か月以内に許可又は却下を行います。
なお、延納担保などの状況によっては、許可又は却下までの期間を最長で6か月まで延長する場合があります。
5.延納から物納への変更 ※「特定物納制度」
延納の許可を受けた相続税額について、その後に延納条件を履行することが困難となった場合には、申告期限から10年以内に限り、分納期限が未到来の税額部分について、延納から物納への変更を行うことができます。
特定物納申請をした場合には、物納財産を納付するまでの期間に応じ、当初の延納条件による利子税を納付することとなります。
なお、特定物納に係る財産の収納価額は、特定物納申請書を提出した時の価額となります。
※ 上記については、平成18年4月1日以後の相続開始により財産を取得した場合に適用されます。
なお、平成18年3月31日以前の相続開始により財産を取得した場合には、改正前の相続税法が適用され、上記の担保提供関係書類の提出期限、延納の許可までの審査期間及び特定物納制度の適用はありません。
延納から物納への変更は、原則としては認められないが、延納中の者が資力の状況の変化等により延納による納付が困難となった場合には、申告期限から10年以内に限り、物納に変更することができます。
[「国税庁HP/タックスアンサー」 参考]
まとめ
延納の申請は、相続人ごとに行うものです。それぞれの相続人が延納するかどうか、そのメリット・デメリットを十分理解しておいた方がいいのですが・・・。
今後も依頼者と同じ視線で、「相談・手続きする前の予備知識」を書いていきたいと思います。お役に立つことが出来れば幸いです。
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