中小企業を経営している社長は、会社が銀行から借り入れをしていれば、ほぼ間違いなくその社長は会社の連帯保証人です。業績が悪化し、銀行が会社に対して借入金の返済を迫られた場合、しかたなく社長個人の不動産を売却し会社の借入金の返済にあてるケースは多々あります。通常、自分の借金を返済するために不動産売却をしても譲渡税が非課税になることはありません。しかし、連帯保証人や保証人が代わりに会社の借金を、自身の不動産売却資金で肩代わりした場合には、譲渡税がかからない特例があります。

目次

1 特例のあらまし

2 特例の要件

3 所得がなかったものとされる金額


1 特例のあらまし

保証債務を履行するために土地建物などを売った場合には、所得がなかったものとする特例があります。
保証債務の履行とは、本来の債務者が債務を弁済しないときに保証人などが肩代わりをして、その債務を弁済することをいいます。保証債務の履行にあてはまる主なものは、次の四つです。

(1)保証人、連帯保証人として債務を弁済した場合

(2)連帯債務者として他の連帯債務者の債務を弁済した場合

(3)身元保証人として債務を弁済した場合

(4)他人の債務を担保するために、抵当権などを設定した人がその債務を弁済したり、抵当権などを実行された場合

 

2 特例の要件

この特例を受けるには、次の三つの要件をすべて当てはまることが必要です。

(1)本来の債務者がすでにい債務を弁済できない状態であるときに債務の保証をしたものでないこと。

(2)保証債務を履行するために土地建物などを売っていること。

(3)履行した債務の全部または一部の金額が、本来の債務者から回収できなくなったこと。

この回収できなくなったこととは、本来の債務者が資力を失っているなど、債務の弁済能力がないため将来的にも回収できない場合をいいます。
例えば、本来の債務者が破産をしていたり、失踪をしているなどの場合がこれに当たります。

したがって、本来の債務者に弁済能力があるのに債権の回収をしないときは、この特例は受けられません。

 

3.所得がなかったものとされる金額

(1)肩代わりをした債務の内、回収できなくなった金額

(2)保証債務を履行した人のその年の総所得金額等の合計額

(3)売った土地建物などの譲渡益の額

[「国税庁HP/タックスアンサー」 参考]

 

まとめ

保証人による保証債務の履行義務は、主たる債務者が返済期限までに債務を返済しない場合に、債権者(銀行)から保証人に対し保証債務の履行請求を受けて初めて発生します
したがって、保証人が銀行からの請求前に債務の返済をすると、「保証人から会社が借入をして債務を返済した。」とみなされ、保証債務の特例の適用がありません

銀行の方には悪いのですが、意外とこの特例を知らない行員に出会います。実際にあった話ですが、銀行の領収証が社長個人宛に「保証債務履行弁済金として」ではなく、会社宛に「返済金として」とされそうになったことがあります。このケースでは、支店担当者が最初意味が分からず、本部に確認してもらい、適正に処理してもらったので良かったのですが…。間違えたままで処理されると、上記と同様に「不動産売却代金を保証人(社長個人)が会社に貸付、会社はその資金で銀行返済した」という会計処理になってしまい保証債務の特例の適用できません。「知らなかった。」で済む話ではありません。

 

 

オフィスSANOは、相続財産(金融資産 & 不動産)の問題はもちろんのこと、不動産問題について『知っていると得すること』・『知らないと損すること』に重点をおいて情報を発信してまいります。
どうしたらよいか分からない時は、不動産問題解決ナビゲータ オフィスSANOまでお気軽にご相談ください。