土地の売買で許認可が下りなければ、移転登記が出来ないケースがあります。例えば、開発行為、農用地除外申請 等は、許可が下りるまで1年以上要する場合があります。特に、高齢の売主にとって不測の事態を考える事は仕方のないことだと思います。実際、売買契約締結後、所有権移転登記前に売主が死亡したらどうなるのでしょうか?
目次
1.相続人がいる場合
2.相続人がいない場合
1.相続人がいる場合
(1)単純承認
単純相続をした相続人は被相続人である売主の権利義務を包括的に承継するので、買主は相続人に対して売買代金の支払いと引き換えに所有権移転および土地の引渡を請求することができます。
(2)限定承認
限定承認の前に売買契約が締結されていることから、買主は限定承認者に対し売買代金全額の支払と引き換えに所有権移転および土地の引渡を請求することができます。
(3)相続放棄
被相続人が相続放棄をした場合には初めから相続人とならなかったことになるため、その者以外に相続人となった者に対して売買代金全額の支払と引き換えに所有権移転および土地の引渡を請求することができます。っただし、相続人が全員放棄した場合には、初めから相続人が存在しなかったことになるため、相続財産管理人に請求することになります。
2.相続人がいない場合
相続人がいない、もしくは相続人がすべて相続放棄した場合には、相続財産自体が独立の相続財産管理人(法人)となり、利害関係人または検察官の請求によって家庭裁判所により相続財産管理人が選任することになります。今回のケースにおいては、すでに売買契約が締結され、債務の履行のみが問題となることから、買主は売買代金全額の支払と引き換えに所有権移転および土地の引渡を請求することができます。
「Q&A不動産取引トラブル解決の手引/新日本法規」より引用
まとめ
相続が発生する前に売買契約が締結されていれば、「売買代金の支払いと引き換えに所有権移転および土地の引渡を請求することができる。」ので一安心です。しかし、世知がない世の中、相続が確定していなにも関わらず、相続人の一人が「自分だけが相続人だ。」などと主張され、売買代金の支払いを請求してくる可能性もあります。
売主側に相続が発生した場合には、買主は弁護士・司法書士などの専門家に依頼して、相続人及び被相続人の戸籍謄本の確認、他の相続人に確認、家庭裁判所に相続放棄・限定承認の申述の有無について照会する。など相続人の確定作業を行う必要があります。
今回のようなケースは、今後増えていくのではないでしょうか?
本情報は、法律・税務・金融などの一般的な説明です。個別の具体的な判断や対策などは専門家(弁護士・税理士など)にご相談ください。
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