不動産の売買では金額が高額になるため、一般的に買主は、金融機関から融資を受けて不動産を購入します。そのため、買主が融資の承認が得られなかった場合には、売買契約自体を白紙にすることができる特約のことを、「融資利用に関する特約(=ローン特約)」といいます
この特約には、「解除権留保型」と「解除条件型」の2通りの特約があります。どちらを選択するかによって、効果が違います。具体的には、どのようなことでしょうか?

目次

1.ローン特約の形態「解除権留保型」とは?
2.ローン特約の形態「解除条件型」とは?
3.「解除権留保型」の留意点
4.「解除条件型」の留意点

1.ローン特約の形態「解除権留保型」とは?

融資の承認が得られなかった場合に、買主に特約の解除権を与える特約のことをいいます。つまり、買主が解除を申し出ない限り融資特約による契約解除の効力は生じません。

[参考]

■標記の融資未承認の場合の契約解除期限までに、融資の全部又は一部ついて承認を得られないとき、買主は、融資未承認の場合の契約解除期限までは、この契約を解除することができる。又、金融機関の審査中に標記の融資未承認の場合の契約解除に期限が経過した場合には、本売買契約は自動的に解除となる。

■融資の全部または一部について承認が得られなかった場合は、この契約締結後30日以内に限り、買主はこの契約を解除することができるものとする。 等

2.ローン特約の形態「解除条件型」とは?

融資の承認が得られなかった場合に、売買契約が自動的に白紙解約となる特約のことをいいます。この「解除条件型」は、現在、全国宅地建物取引業協会連合会の指定契約書に採用されています。

[参考]※一部修正しています。

標記の融資未承認の場合の契約解除期限までに、融資の全部又は一部ついて承認を得られないとき、又、金融機関の審査中に標記の融資未承認の場合の契約解除に期限が経過した場合には、本売買契約は自動的に解除となる。

3.「解除権留保型」の留意点

「解除権留保型」のローン特約は、1日でも解除通告期限を経過してしまうと契約解除ができません

4.「解除条件型」の留意点

「解除条件型」のローン特約は、期限が経過してしまうと契約自体効力が消滅してしまうため、買主や仲介業者が、別の金融機関に融資相談をかけていたとしても全て無駄になってしまいます。ただし、期限前に「売買契約変更合意書」を交わせば問題ありません

まとめ

不動産の購入に関し、複数の金融機関に相談をして検討したい方は、「解除権留保型」か「解除条件型」のどちらのローン特約の条項の記載になっているか確認して頂く事をお勧め致します。

なお、買主と仲介業者の間で、不動産の売買契約でローン特約を付けるとの黙示の合意があったとして、契約書にローン特約条項を記載させなかった仲介業者に対して損害賠償責任を負うことになった判例もあるようです。[新日本法規「最新 宅地建物取引実務マニュアル」より]
我々仲介業者も十二分に注意しなければなりません。また、売主と買主との間で認識にズレが生じてトラブルになってしまう可能性もあります。必ず、事前の確認が大事です。

 

 

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