不動産を共有していると、共有している所有者全員の同意が得られなければ「売却・建替など」できません。親子間や年齢が近い兄弟間であれば比較的問題になる可能性が低いですが、その後、相続の回数が増えてくると共有者の数も多くなり、様々な考え方や意見・思惑がでてきます。それによって、人間関係もうまくいかず、ますますトラブルになったケースが増えています。

不動産の共有問題の解決方法として5つの方法を紹介します。

目次

1.共有持ち分の買取または、売却
2.共有持ち分の贈与
3.共有不動産の共同一括売却
4.共有不動産の分割
5.共有不動産の交換

1.共有持ち分の買取または、売却

共有持ち分を他の共有者が買い取って単独名義にする方法です。なお、購入する側は、購入代金とは別に登録免許税や不動産取得税がかかります。また、売却する側も売却に関して譲渡益があれば譲渡所得税が生じる場合もあります。(※居住用財産の3000万円控除であれば譲渡税がかからないケースもあります。)
ただし、売却する相手が親子・夫婦などの親族の場合には適用できませんので注意が必要です。

2.共有持ち分の贈与

自身の共有持ち分を他の共有者に贈与する方法です。贈与を受けた側は贈与税が課税されます。また、買取同様に登録免許税や不動産取得税がかかります。

3.共有不動産の共同一括売却

共有者全員が一緒に不動産を売却する方法です。こちらも、譲渡益があれば譲渡所得税が生じる場合があります。

4.共有不動産の分割

共有地は、下記条文(民法 第256条)のとおり、いつでも「共有物の分割」を請求することができます。つまり、共有者の一方に他の共有者が分割の要求をすることが可能です。また、「共有物分割」の場合、各持ち分に応じた分割を行ったときには譲渡所得税がかからないことになっています。(※下記引用条文参照)ただし、登録免許税ともともとの持ち分以上に取得することになった場合には、不動産取得税の対象になります

 

■民法 第256条(共有物の分割請求)
1.各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。ただし、五年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることを妨げない。
2.前項ただし書の契約は、更新することができる。ただし、その期間は、更新の時から五年を超えることができない

■共有物の分割に係る所得税の譲渡所得の課税について
(1)共有持分の分割についての所得税の取扱い
二以上の者が一の土地を共有している場合において、その土地をそれぞれの共有持分にて現物分割し、それぞれ単独所有の土地としたときは、判例上、共有者相互問において、共有各部分につき、その有する持分の交換又は売買が行われることであって、各共有者が取得部分について単独所有権を原始的に取得するものではないといわれています(最高裁第二小法廷判例 昭和42.8.25 判例集―民集 第21巻7号1729頁、平成26年版所得税基本通達逐条解説185頁)。したがって、共有の土地を、それぞれの持分に従って現物分割した場合、①その法律的性格に着目すれば、その共有持分の交換(譲渡)があったことになるので、その譲渡による利益について所得税が課税されるのではないかという疑問があります。

しかし、共有関係にある一の資産を現物で分割するということは、②その資産の全体に及んでいた共有持分権が、その資産の一部(現物分割で取得した部分)に集約されただけにすぎず、資産の譲渡による収益の実現があったといえるだけの経済的実態は備わっていないということもできます。

そこで国税庁は、国税庁は所得税基本通達33-1の6により、個人が他の者と共有している土地について、その持分に応ずる現物分割があったときには、税務上は①の考え方にはよらず、②の考え方に基づき、その分割による土地の共有持分の譲渡はなかったものとして、所得税の譲渡所得の課税関係を生じせないこととして取扱うこととしています。

なお、現物分割された土地の面積の比と共有持分との比が異なる場合がありえますが、そのような場合であっても、その分割後のそれぞれの土地の価額の比が共有持分の割合におおむね等しいときは、その分割はその共有持分に応ずる現物分割に該当することとされます(所得税基本通達33-1の6(注)2)。

(2)共有土地の分割に要した費用の所得税計算上の取扱い
なお、共有の土地の分割に要した測量費用などの費用の額は、その土地が業務の用に供されるもので当該業務に係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入されたものを除き、その土地の取得費に算入されます。(所得税基本通達33-1の6(注)1)。

[公益社団法人 全日本不動産協会 ホームページ参照]

5.共有不動産の交換

共有物を所有する者同士が2つ以上の同じ共有物を所有している場合に、それぞれの持ち分を交換することでその各不動産を単独所有にする方法です。不動産を交換した場合には、譲渡をしたことになり譲渡所得税が発生する可能性があります。ただし、一定条件を満たせば譲渡がなかったことにする「固定資産の交換の特例(※下記条文参照)」制度を利用することが可能です。

■固定資産の交換の特例
1 制度の概要
個人が、土地や建物などの固定資産を同じ種類の固定資産と交換したときは、譲渡がなかったものとする特例があり、これを固定資産の交換の特例といいます。

2 特例を受けるための適用要件
(1) 交換により譲渡する資産及び取得する資産は、いずれも固定資産であること。
不動産業者などが販売のために所有している土地などの資産(棚卸資産)は、特例の対象になりません。
(2) 交換により譲渡する資産及び取得する資産は、いずれも土地と土地、建物と建物のように互いに同じ種類の資産であること。
この場合、借地権は土地の種類に含まれ、建物に附属する設備及び構築物は建物の種類に含まれます。
(3) 交換により譲渡する資産は、1年以上所有していたものであること。
(4) 交換により取得する資産は、交換の相手が1年以上所有していたものであり、かつ交換のために取得したものでないこと。
(5) 交換により取得する資産を、譲渡する資産の交換直前の用途と同じ用途に使用すること。
この用途については、次のように区分されます。
この用途について、土地の場合は、宅地、田畑、山林、鉱泉地、池又は沼、牧場又は原野、その他に区分されています。
建物の場合は、居住用、店舗又は事務所用、工場用、倉庫用、その他用に区分されています。
(6) 交換により譲渡する資産の時価と取得する資産の時価との差額が、これらの時価のうちいずれか高い方の価額の20%以内であること。

[国税庁ホームページ 参考]

まとめ

将来の相続を考えると不動産の共有は、権利関係が複雑になり争続の原因になる可能性が非常に高くなります。争続の準備をしているようなものです。親が生前に贈与や遺言等で決めておくが大切です。

本情報は、法律・税務・金融などの一般的な説明です。個別の具体的な判断や対策などは専門家(弁護士・税理士など)にご相談ください。

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