固定資産税は、1月1日現在での土地・家屋及び償却資産(これらを総称して「固定資産」という)の所有者に課税される市町村税です。(地方税法第342条)
実は、秋頃からの住宅(家屋)の解体工事は、所有者にとっては注意しなければならない時期です。理由は、2つあります。1番目は、12月末に解体が完了すれば翌年の住宅(家屋)に対しての固定資産税や都市計画税は課税されません。2番目は、12月の時期は解体業者の繁忙期です。年内に工事が完了する予定だったのが、工事が終わらない可能性が高いのです。
年末の時点で解体工事が途中になってしまった場合、「家屋の固定資産税や都市計画税は、どのような扱いになるのでしょうか?」
目次
1.固定資産税の対象となる家屋とは?
2.家屋判定の実例
3.課税対象となる家屋の事例
4.補足「建築確認」
1.固定資産税の対象となる家屋とは?
固定資産税における家屋とは、「住宅、店舗、工場(発電所及び変電所を含む)、倉庫その他の建物をいう」とされ、不動産登記法における「建物」とその同意義のものであり、したがって登記簿に登記されるべき建物をいう」とされています。家屋の認定基準は、原則として不動産登記規則第111条の規定に準じます。
不動産登記規則第111条は、建物の認定基準を「建物は、屋根及び周壁又はこれに類するものを有し、地に定着した建造物であってその目的とする用途に供し得る状態にあるもの」と規定し、「①外気分断性」「②土地への定着性」「③用途性」の3つを要件としています。
(※課税対象となる家屋の要件には、床面積は含まれていません。数㎡の増築や、小規模な物置を新築する場合、上記の3つの要件を満たすものは課税対象となります。)
①外気分断(遮風)性とは?
屋根及び周壁又はこれに類するもの(三方向以上壁で囲われている等)を有し独立して風雨をしのぐことができることをいいます。支柱と屋根材のみで作られた駐輪場やカーポートなど、周壁のないものについては、 外気分断性は認められません。(※駅の乗降場や、野球場の観覧席など、二方向以上開けておくことが望ましい場合、完全な外気分断性が認められなくても家屋として認定されます。)
②土地への定着性とは
基礎等で物理的に土地に定着していることをいいます。コンクリートブロックの上に、市販の簡易物置やコンテナを乗せただけの状態では、土地への定着性は認められません。
※工事現場の短期間用の仮設事務所などで、土地への定着性が完全に認められないものであっても、課税の基準日である1月1日(賦課期日)を含めて相当期間継続して存在し、他の一般的な家屋と同程度の施工が施されているものについては、課税対象として取り扱うことが適当とされています。
③用途性とは
建造物が家屋本来の目的(居住・作業・貯蔵等)を有し、その目的とする用途に供し得る一定の利用空間が形成されていることをいいます。
つまり、1月1日時点で「外壁・基礎が一部残っていても本来の目的で使用できない状態であれば、家屋の固定資産税や都市計画税は課税されない。」ということになります。
2.家屋判定の実例
ホームセンターなどで売られている物置は、外気分断性があり、用途も認められるため、土地への定着性があるか否かで課税対象であるかが判定されます。四隅にコンクリートブロックを置き、その上に乗せただけの物置は、土地への定着性がないため課税対象となりません。一方、基礎工事をして容易に動かすことが困難な物置は、土地への定着性があると判断され課税対象になります。
3.課税対象となる家屋の事例
①ガレージやカーポートは?
・基礎があり、三方向以上の壁があるようないわゆる「ガレージ」は、固定資産税の課税対象となります。
・柱と屋根だけのいわゆる「カーポート」については、家屋とはいえず、自家用である場合には、家屋の固定資産税の課税対象にはなりません。
(ただし、事務所や店舗の来客用などに設置されたカーポートについては「償却資産」として固定資産税の課税対象になります)
②高床式構造の建物は?
・1階に階段室がなく外階段で2階の玄関に上がるような構造の場合、建物自体は直接土地に接していませんが、間接的に土地に定着していると判断します。したがって、高床式の平家建ということになり、課税の対象となります。
4.補足「建築確認」
基本的に床面積10㎡(約6畳)を超える建築物を建てる場合は、建築確認申請が必要となってきます。概略は、防火地域・準防火地域でない地域で、すでに住宅が建っている土地に床面積10㎡以内の小屋・物置などを建てる場合は建築確認が不要となります。※詳細は、一級建築士等の専門家に確認した方がいい。
まとめ
非住居であるホテル・店舗など比較的家屋の固定資産税が年間の税額が数百万円と高い不動産を売却する際に、引渡条件が「建物解体更地渡し」の場合は、年末までに解体工事が完了しておかないと手取金額が大きく変わってしまうことになります。
次回は、固定資産税をテーマに『築年数の古いマイホームを売却する時期は?』について書く予定です。
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