相続人に行方不明者がいる場合、当然ですが遺産分割協議ができません。その場合、「失踪宣告」制度を利用すると、行方不明者を死亡したものとみなせるため遺産分割協議を行うことが可能となります。ここでは、初歩的な概要についてまとまめてみました。

所在・ここに導入文を記述します

目次

1.「失踪宣告」制度の概要
2.行方不明(音信不通)の状態とは?
3.共同相続人であっても「不在者財産管理人」になれるのでしょうか?
4.不在者である財産を売却したときの税金の扱いは?

1.「失踪宣告」制度の概要

生死不明の者に対して、法律上死亡したものとみなす効果を生じさせる制度を「失踪宣告」といいます。

[概要]裁判所ホームページより

不在者(従来の住所又は居所を去り,容易に戻る見込みのない者)につき,その生死が7年間明らかでないとき(普通失踪),又は戦争,船舶の沈没,震災などの死亡の原因となる危難に遭遇しその危難が去った後その生死が1年間明らかでないとき(危難失踪)は,家庭裁判所は,申立てにより,失踪宣告をすることができます。 失踪宣告とは,生死不明の者に対して,法律上死亡したものとみなす効果を生じさせる制度です。

2.行方不明(音信不通)の状態とは?

行方不明(音信不通)の状態とは、以下の事をいいます。

①連絡先を調べる方法が分からず連絡が取れない場合。
手続きは、弁護士・司法書士などで行うことになります。まず行方不明者の住所を特定し戸籍を追っていくと、行方不明者の現在の本籍地にたどり着きます。本籍地の市区町村で発行している戸籍の附票という書類で、行方不明者の現在の住所を確認できます。行方不明者の現在の住所が特定できたら、手紙を書いたり直接住所地を訪ねたりして可能な限り連絡を取り、遺産分割の交渉を進めます。

②生きているはずだが調べても住所がなく居所がつかめない場合。
家庭裁判所に不在者財産管理人選任の申し立てをします。家庭裁判所の許可を得て、この不在者財産管理人が行方不明者の代わりに遺産分割協議に参加することで、遺産を分割することができます。

③7年以上、居場所や生死がわからない状態が続き生きているかどうかも分からない場合。
上記で書いたとおり、家庭裁判所に失踪宣告を申し立て、行方不明者を行方不明になった時から、7年後に亡くなったものとみなしてもらうこともできます。(普通失踪)。この場合、行方不明者に子供がいればその子供が相続人となり、今回の遺産分割協議に参加しなければ、遺産を分割できません。(代襲相続)。ただし、被相続人が亡くなった後に行方不明者が亡くなったとみなされた場合には、代襲相続は発生しません

④船舶事故や震災等
船舶事故や震災等に遭い、その後1年以上生きているかどうかがわからない場合、上記と同様に失踪宣告の申し立てができます(危難失踪)。

3.共同相続人であっても「不在者財産管理人」になれるのでしょうか?

不在者財産管理人にはなれます。しかしながら、遺産分割協議や財産の処分には必ず代理人を立てねばなりません。その理由は、この不在者財産管理人は、あくまで行方不明の不在者の為の選任です。利益相反の関係となってしまうからです。

4.不在者である財産を売却したときの税金の扱いは?

不在者財産管理人が、代理人として申告を行います。

国税庁ホームページによると、以下のQ&Aがありました。

甲(弁護士)は、不在者乙の財産管理人ですが、家庭裁判所の許可を得て、乙所有の土地を第三者に売却しました。
この場合、財産管理人である甲は、不在者である乙の土地の譲渡所得について、乙に代わって所得税の申告を行うことができますか。
【回答要旨】
不在者財産管理人は一種の法定代理人であるから、その権限は基本的に民法第103条の範囲内にあり、管理行為(保存行為、利用行為、改良行為)のみを行うことができ、それを超える処分行為を行うときには、家庭裁判所の権限外行為許可を得なければならないとされています(民法28)。
不在者財産管理人が家庭裁判所の権限外行為許可を得て、不在者の財産を譲渡した場合、当該譲渡についての納税申告は保存行為に該当すると解されますから、不在者財産管理人は、家庭裁判所の権限外行為許可を得ることなく、不在者の代理人として納税申告を行うことができます。
したがって、照会の場合も、甲は乙の代理人として所得税の申告書を提出することができ、甲から提出された申告書は乙の適法な申告書として取り扱われます。

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