これまで、任意売却による取引について「境界の明示義務」・「裁判所の許可&債権者の同意」について書いてきました。今回もよくある相談内容で「物件内に残っている売主の荷物等」と「瑕疵担保責任」についてまとめてみました。任意売却による取引の場合、売主となる債務者に資力がないことが一般的です。よって、通常の不動産取引とは異なり、決済後に売主に何らかの義務が発生しないようにすることが任意売却取引の場合の基本的な考え方になります

破産管財人による任意売却で不動産を購入しようとする場合には、是非ともご参考にしてください。

目次

1.物件内にある動産(家財・残置物)の処理について
2.瑕疵担保について

1.物件内にある動産(家財・残置物)の処理について

物件の引渡をする場合、取引対象の物件内にある動産(家財、残置物)については、原則売主側にて処理することになります。ただし、売主側に資料・身体的な事情などを考慮して、売主側で対処することが難しいと判断された場合には、売買契約書に条文を明記して、買主側で処理することになる場合もあります。なお、取り決めがなされていない場合は、引渡し後に残っている家財・残置物等の動産が残っているを勝手に処分すると問題になることがあります。競売も同様ですので注意が必要です。

[参考/売買契約書 条文例]

第○条 (付属物等の帰属)

1.本件土地建物の引渡時点において本件土地建物に売主が残置する動産類及び本件土地上に存する未登記建物(以下、併せて「残置物等」という。)については、本件土地建物の引渡により、引渡時点で残存物等にかかる売主の所有権が買主に移転する。
2.前項の場合において、買主は売主に対して残置物等の処分費用ないし撤去費用の請求その他何らかの請求を行わないものとし、何ら異議を申し出ないものとする。

[新日本法規「事例式 不動産契約作成マニュアル」より]

2.瑕疵担保について

破産管財物件の場合、破産管財人において破産財団を超えて瑕疵担保責任を負うことが現実的に難しく、万一破産管財人が瑕疵担保責任を負うことになれば長期間破産手続きを終了することができなくなります。原則、任意売却並びに競売物件は、瑕疵担保責任は免除されます

[参考/売買契約書 条文例]

第○条(瑕疵担保責任)

売主は、本件土地建物の瑕疵(地中埋設物、土壌汚染、アスベスト、ポリ塩化ビフェニル(PCB)含有物については、これらが瑕疵にあたるか否かに関わらず、本条の瑕疵担保責任免責の対象となり、かつ、これらに限られない。)について、一切瑕疵担保責任を負わないとし、買主は売主に対し何らの請求権も有さず。請求もしないものとする。

[新日本法規「事例式 不動産契約作成マニュアル」より]

まとめ

一般的に任意売却や競売物件は、通常の取引価格に比べて安価に購入できます。しかし、購入後の残置物等の処分費用、測量費用、リフォーム工事費用などが発生すると決して割安な物件になりません。昔から「値頃感のある物件は、要注意!」と言われています。購入を検討する場合は、専門の業者などに相談されることをお勧め致します。

 

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