貸主Aは、借主Bに駐車場として一括賃貸している土地があり、土地の大部分は駐車場として使用しています。なお、隅にはBが建築し登記済の木造2階建ての小さな建物があり、1階は、トラック用駐車場、2階は駐車場管理人のための管理室として使用している状況です。土地購入者は、この土地をマンション用地として購入して移転登記をし、工事に着手しようとしたところ、借主Bから、この土地について貸主Aとの間で賃貸借契約が終了していないので工事を中止して欲しいとの要望がありました。貸主Aに確認したところ「契約を終了したい」という通知を出しただけでBの了解を得ていない事が分かりました。

この場合は、土地購入者は工事を中止しなければならないのでしょうか? 答えは、「工事を中止する必要はありません。」

なぜ、中止する必要がないのでしょうか?

[参考文献 新日本法規 出版「Q&A 不動産取引トラブル解決の手引」]

目次

1.賃貸借契約が建物所有目的といえるかが問題
2.「建物所有の目的」の基準
3.「建物所有の目的」に該当しないケース
4.「建物所有の目的」に該当するケース

1.賃貸借契約が建物所有目的といえるかが問題

賃貸借契約成立後、第三者が所有者である貸主から土地を購入した場合、借主は購入した第三者に対し賃借権を主張できないのが原則です。しかし、賃借権の登記がなされている場合の他、賃貸借契約が建物所有の目的でなされている場合には、登記されている建物を所有している限り、借主は第三者に賃借権を主張することができます

今回のケースでは、土地の大部分を駐車場として使用していること。B所有の木造2階建ての建物は、トラック置場と駐車場を管理するために建てられたわけですから、この賃貸借契約は、駐車場使用を主たる目的として締結されたものであり、建物所有の目的ではないため賃借権は主張することができないのです。

2.「建物所有の目的」の基準

建物所有の目的が主たるどうかについては、借地全体に対する建物敷地の割合や借地全体の使用目的と建物の使用目的との関連性などを考慮して判断されるようです。

3.「建物所有の目的」に該当しないケース

① 資材置き場にする目的で賃借した借地
② ゴルフ練習場として使用する目的で賃借した借地
③ ゴルフ場として使用する目的で賃借した借地
④ 駐車場または簡易車庫として使用する目的で賃借した借地
⑤ 中古車展示場として使用する目的で賃借した借地
⑥ バスターミナル出入り口として使用する目的で賃借した借地
⑦ 養魚場または釣り堀として使用する目的で賃借した借地

4.「建物所有の目的」に該当するケース

① 中古車の展示販売及び、これに付随した自動車の修理業を行うことを目的として賃借した借地
② 自動車学校建築のための木造家屋の敷地に使用することを目的として賃借した場合

まとめ

借主Bの所有している建物を勝手に壊すことは、問題があります。話をこじらせず、借主Bが早期に退去してもらうためには、借主Bに対し「引越費用など相当の立退料を支払」と「解体費用の土地購入者負担」を検討する必要があるようです。

今回のようなトラブルを避けるためには、引き渡し前に合意書などの書面のやり取りが必要ではないでしょうか?

 

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