自己破産すれば、「銀行からの借り入れはもちろん、法人税や固定資産税・健康保険料の未納付分も全て免除される。」と誤解している方が意外に多いと思います。そのポイントだけを重点的にまとめました。

目次

1.支払義務が免除されるのは?
2.支払義務が免除されないのは?
3.「国税優先の原則」とは?
4.国税及び地方税等と抵当権等(私債権)との競合の調整

1.支払義務が免除されるのは?

自己破産の決定がなされ、免責の決定が下されると、基本的に借金などの債務の支払い義務が全てなくなります。

2.支払義務が免除されないのは?

税金や健康保険の保険料は免責の対象になりません。よって、免責決定がなされても税金(固定資産税、住民税)や社会保険の滞納分は免除されません。
そもそも、税金は国民の義務として憲法でも規定されています。そのため、破産法では税金については、免責の対象から外しています。同様に、相互扶助の精神から、国民健康保険料なども免責の対象からはずされています。税金・健康保険の滞納分はきちんと払わなければなりません。

(国税滞納処分等の取扱い)
第四十三条 破産手続開始の決定があった場合には、破産財団に属する財産に対する国税滞納処分は、することができない。
2 破産財団に属する財産に対して国税滞納処分が既にされている場合には、破産手続開始の決定は、その国税滞納処分の続行を妨げない。
3 破産手続開始の決定があったときは、破産手続が終了するまでの間は、罰金、科料及び追徴の時効は、進行しない。免責許可の申立てがあった後当該申立てについての裁判が確定するまでの間(破産手続開始の決定前に免責許可の申立てがあった場合にあっては、破産手続開始の決定後当該申立てについての裁判が確定するまでの間)も、同様とする。

3.「国税優先の原則」とは?

国税(以下「地方税」も同じ)は、納税者の総財産について国税徴収法第2章(国税と他の債権との調整)に別段の定めがある場合を除き、全ての公課及びその他の債権(=抵当権等の私債権)に先立って徴収されます。(国税徴収法第8条)
この「先立って徴収する」とは、納税者の財産が「強制換価手続」によって換価された場合において、国税が公課その他の債権と競合したときは、その換価代金から公課その他の債権に優先して国税を徴収すること。(=換価代金の配当において国税が公課その他の債権よりも優先して配当を受けること)をいいます。(国税徴収法基本通達8-4)

4.国税及び地方税等と抵当権等(私債権)との競合の調整

強制換価手続きにおける優先順位について、租税債権と私債権との間は、法定納期限と質権・抵当権等の担保権設定時期との先後によって決まります。一方、租税債権間(例えば、国税と地方税)は差押や交付要求の先着手でその優劣が決まります。

このように、配当順位の優劣の基準が異なるため配当手続きにおいて
① 国税が地方税を優先数する。
② 地方税は、抵当権等に担保される債権(私債権)に優先する。
③ 抵当権等に担保される債権(私債権)は、国税に優先する。

という三者三つ巴となる場合が出てきます。

[国税庁ホームページ「国税徴収法基本通達」参考]

まとめ

税金は、行政機関と協議して少額でも納付していくのが得策です。過去に固定資産税でしたが、1,000円という方がいらっしゃいました。因みにその方は、20数年掛けて全額納付しました。
このような方は、過去の失敗経験を生かし今は事業家として復活しています。私も、「人生のお手本」とさせて頂いております。

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