個人所有の土地において土地有効活用による対策には、固定資産税等の軽減、(相続税)の軽減、及び消費税の還付の 3つの税効果が期待できます。

目次

1.固定資産税等の軽減
2.相続税の軽減
3.消費税の還付手続き
4.借入金で相続税が減るわけではない点に注意!

1.固定資産税等の軽減

ⅰ.土地/駐車場などの土地に比べて住宅用地は、固定資産税が低い。
住宅用地(※1)については、税負担を軽減するため、住宅用地の固定資産税評価額に特例率を乗じて得た額を限度額とするものです。
そのため同じ面積の駐車場に比べ固定資産税は低く抑えられます。

住宅用地とは、住宅用家屋の敷地や、住宅用家屋の敷地と一体になっている庭・自家用駐車場など人が居住する目的で所有している土地です。 この住宅用地については、その税負担を軽減する目的から、課税標準の特例措置が設けられています。
● 小規模住宅用地(住宅1戸につき200㎡までの部分)・固定資産税の課税標準額1/6に減額/ 課税標準額×1/6×1.4%
● 一般住宅用地(小規模住宅用地以外の住宅用地)・・・固定資産税の課税標準額1/3に減額/ 課税標準額×1/3×1.4%
(※ただし、建物課税床面積の10倍までが限度となります。)

ⅱ.建物/用途が住宅の場合には、固定資産税が低い。
戸建・賃貸住宅等を建築した場合、新たに固定資産税が課されることとなった年度から3年間(※3階建以上の中高層耐火住宅は5年間)は建物の固定資産税は低く抑えられます。

床面積が50㎡(戸建以外の貸家住宅は40㎡)以上280㎡以下の住宅。ただし、120㎡を超える場合は120㎡分が軽減。
2020年3月31日までに完成]
● 固定資産税の課税標準額1/2に減額/ 課税標準額×1/2×1.4%

2.相続税の軽減

ⅰ.土地の相続税評価額を下げる
路線価は公示価格の80%程度とされているが、土地等はその利用状況により更に評価減を受けられる。
ⅱ.「貸家建付地」にして相続税の評価額を下げる。
所有土地上にアパート・賃貸マンションなどを建築すると、相続税評価の上でその敷地の利用区分が更地(自用地)から貸家建付地に代わり、更地の場合より15%〜24%程度相続税評価額の引下げることができ、減額金額も大きい。リース建築業者の営業担当者がよく使うセールストークです。
【貸家建付地の算式】
(その宅地の自用地としての価額)-{(その宅地の自用地としての価額)x(借地権割合)x(借家権割合)x(賃貸割合)}
                         ※上式の{}内の価額分、評価が下がります。
ⅲ.「地積規模の大きな宅地」に該当すれば相続税の評価額を下がる。
対象地が広大地(その地域における標準的な宅地の地積に比べ著しく地積が広大な宅地)に該当する場合には30%〜40%弱程度相続税評価額の引下げることができる。
ただし、マンション等を建築する場合には広大地評価の適用を受けられず、相続税評価額がアップすることも予想されるので注意が必要。
※2018年1月1日以降の相続について「広大地評価」に代わって新たに「地積規模の大きな宅地の評価」が新設された。
ⅳ.建物の評価差額を発生させて相続税の評価額を下げる。
建物固定資産税評価額は、建物の建築価格の50%〜60%で、貸家なら更に借家権(30%)の割合を控除される。
【貸家(賃貸建物)の算式】
自用家屋の価額-(自用家屋の価額×借家権割合×賃貸割合)※固定資産税評価額×1.0=自用家屋
⇒ 固定資産税評価額 × 70%

3.消費税の還付手続き

住宅の家賃は、消費税はかかりません。つまり、消費税法では「非課税売上」となり、非課税売上に係る消費税は「個別対応方式」では仕入控除できないので、建物等に係る消費税の還付は受けられません。しかし、「一括比例配分方式」の場合で消費税の「課税事業者」かつ「一般課税」の場合には、事業用賃貸事業(駐車場、貸店舗または倉庫など)がある場合は課税売上があるので、課税売上に相当する仕入に係る消費税額を控除できるます。その場合には、一定額の還付を受けられます。当該条件を満たさない場合、課税期間の開始前迄にその旨の選択届出書等を、所管の税務署に提出が必要です。

4.借入金で相続税が減るわけではない点に注意!

賃貸住宅を建築することによる相続税の軽減効果は、賃貸住宅の建築価格と相続税評価額の差によって生じるものです。建築資金を自己資金でまかなっても借入金でまかなっても相続税の軽減効果は同じになります。
建設会社のセールストークで、まだまだ「借金=相続税対策」と思っている方が多いのが現実です。
ここに、土地(相続税評価額)5,000万円と現金5,000万円を所有している地主Aさんのケースで検証してみましょう。現状は、相続税課税財産は、5,000万円(土地)+5,000万円(現金)=1億円です。

土地は、「貸家建付地」としての評価となります。借地権割合が50%とすると、15%の減額ができるので5,000万円の土地が、4,250万円の評価額になります。
建物は、5千万円の現金を使って賃貸住宅を建てると、まず賃貸住宅の相続税評価額が約半分の2,500万円ほどになります。さらに、貸家として70%を掛けで評価できますから、1,750万円の評価額になります。

ⅰ.借入れの場合
5千万円を借入れし、その5千万円で賃貸住宅を建築した場合は、まずAさんは借入金5千万円により手元の現金が5千万円増えることになります。
[賃貸住宅建築前の相続財産]5,000万円(土地)+1億円(現金)-5,000万円(借入金)=1億円 です。
賃貸住宅建築後の相続財産
4,250万円(土地)+1,750万円(建物)+5,000万円(現金)-5,000万円(借入金)=6,000万円

ⅱ.自己資金の場合
[賃貸住宅建築前の相続財産]5,000万円 + 5,000万円 =1億円
賃貸住宅建築後の相続財産]4,250万円 + 1,750万円 = 6,000万円

確かに「建築前」と「建築後」では純財産評価額の減少されるため相続税の対策になっていますが、借金をしたことによって下がっている訳ではありません。金融機関に利息を支払っているだけになっていることが理解できたのではないでしょうか?

まとめ

よく相続対策は、「時価と相続税評価額の乖離(カイリ)を考えること。」といわれます。これは、税額の計算方法が、課税対象となる価額に税率を掛けて計算されるからです。納付する税額を下げるには、当たり前ですが課税対象になる評価を下げるしかありません。今回、評価の高い「未利用の土地」ついて書きました。同様の問題で「現預金」があります。

次回は、「現預金の相続対策として不動産の購入を勧められる理由?」について書いてみようと思います。

 

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