中古住宅の売買取引において、購入する側は問題がある建物なのか?そうでない建物なのか?不安を抱えて購入しているケースは少なくありません。購入者が安心して中古住宅の売買を行えるようにして、中古住宅市場の流通促進を目的に、平成30年4月1日より「既存住宅に係る建物状況調査の説明等を義務付ける」改正宅地建物取引業法(略して「宅建業法」)が施行されました。その改正内容と実際に売却を検討している所有者にとってどう影響されるかを解説します。

目次

1.宅建業法改正の内容とは?
2.売主にとって最良の媒介契約方式とは?
3.建物に対する調査の対象とは?
4.新耐震基準等に適合することが確認できる書類とは?

1.宅建業法改正の内容とは?

今回の改正では、既存住宅(共同住宅を含む)の売買において次の3つの時点で講じられることになりました。

媒介契約締結時(宅建業法第34条の2第1項第4号)
既存建物の売買又は交換の媒介契約締結時に、建物状況調査(=インスペクション)を実施する者のあっせんに関する事項を記載した書面を依頼者(=売主)へ交付しなければなりません。

重要事項説明時(賃貸物件でも必要となる。)
既存の建物に関する重要事項として次の事項を説明しなければならない。
ⅰ.建物状況調査(実施後1年を経過していないものに限る)を実施しているかどうか、実施している場合にはその結果の概要(宅建業法第35条第1項6号の2イ)
ⅱ.設計図書、点検記録その他建物の建築および維持保全の状況に関する書類で国土交通省令で定めるものの保存状況(宅建業法第35条第1項6号の2ロ)

売買契約締結時
既存建物の売買又は交換の契約成立時に、建物の構造耐力上主要な部分等の状況について当事者(売主と買主)の双方が確認した事項を記載した書面を交付しなければならない。
(宅建業法第37条第1項2号の2)

2.売主にとって最良の媒介契約方式とは?

不動産を売却する場合に媒介契約として「専属専任媒介」・「専任媒介」・「一般媒介」の種類があります。この中で複数の業者に依頼できる一般媒介契約では、調査費用は原則売主の負担となります。よって、複数の不動産業者に売却を依頼する「一般媒介」では、売主にとって調査を実施する会社は1社で良いわけですから、仮に全社があっせんありとされても困ってしまいます。新耐震基準(昭和56年6月1日以降)に適合した中古住宅を売却する際は、「専属専任媒介」又は「専任媒介」で依頼した方が良いのではないでしょうか?

3.建物に対する調査の対象とは?

① 今回の改正で既存住宅状況調査方法の基準が定められており「構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分」が対象となっています。つまり、シロアリや給排水設備などは対象外です。また、この調査は建築基準法関連の法の適合判定ではないため、” 調査の結果が問題なければ、すべてが問題ない優良物件だ”と勘違いされないように気をつけなければなりません
② 解体予定の中古住宅は建物状況調査を行う必要がありません。

4.新耐震基準等に適合することが確認できる書類とは?

昭和56年5月31日以前に新築工事に着手した建物である場合、昭和56年6月1日以降の新耐震基準等に適合することが確認できる書類として次に掲げる書類の有無を確認します。

① 耐震診断結果報告書(建築士の登録番号・記名押印があるもの)
② 既存住宅に係る建設住宅性能評価書
※日本住宅性能基準の耐震等級が等級1、等級2、等級3の評価を受けた評価書に限られます。なお、新耐震基準等に適合することが確認できる書類でないため、等級0の評価を受けた評価書は「書類無し」の扱いになります。
③ 瑕疵保険の保険付保証明書(以前に交付されたもの)
④ 住宅の耐震性に関する書類
●耐震診断結果報告書 ●構造計算書(建築士法第20条第2項に規定する書類)の写し ●耐震基準適合証明書の写し ●住宅耐震改修証明書の写し ●固定資産税減額証明書の写し ●増改築等工事証明書の写し

■旧耐震基準の建物であるか否かの確認方法

● 昭和56年5月31日以前に新築の工事に着手した建物であるか否かは、確認済証又は検査済証に記載された確認済証交付年月日の日付を元に判断する。

● 確認済証又は検査済証がない場合は、建物表題登記を元に判断する。(区分所有建物を除く居住用建物では表題登記日が昭和56年12月31日以前であるもの。事業用建物及び区分所有建物の場合は、昭和58年5月31日以前であるものが調査対象となる。)

● 家屋課税(補充)台帳に建築年月日の記載がある場合にも同様の扱いとする。

まとめ

中古住宅の購入を検討されている方にとっては朗報ではないでしょうか?我々不動産業者もこれからは、単に売買の媒介業務をするだけでなく、建物に関する知識はもちろん保険・税金・補助金制度・許認可などなど複合的な知識を身につけた上で「リスクを見える化」していくことが今後重要になってくると考えます。

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