相続する財産が多い場合によく質問されるのが、「生前にどのくらい贈与すれば相続税が得になるのか?」「相続と贈与どちらが得?」などの質問を受けます。税理士の方のホームページには、よく「相続税の限界税率より贈与税の実効税率が小さくなる財産額を計算する。」方法が紹介されています。実際にそうなんでしょうか?シミュレーションしてみました。

目次

1.相続税と贈与税の速算表
2.贈与税の実効税率
3.相続税の限界税率と贈与税の実効税率を使ってのシミュレーション
4.実際の贈与税と相続税の合計額をシミュレーション

1.相続税と贈与税の速算表

※贈与税の「特例」は、特例贈与財産用(特例税率)を意味します。
この速算表は、直系尊属(祖父母や父母など)から、その年の1月1日において20歳以上の者(子・孫など)への贈与税の計算に使用します。

2.贈与税の実効税率

3.相続税の限界税率と贈与税の実効税率を使ってのシミュレーション

相続税の限界税率と贈与税の実効税率を使ってシミュレーションする場合に次の手順が書かれています。この手順に従ってシミュレーションしてみました。

〈手順〉
1 相続税額を算出する
2 限界税率(x%)が適用されている部分の金額(y円)を求める
3 y円を贈与した場合の贈与税額を算出する
4 贈与税の実効税率(z%)を求める
※贈与税の計算は、特例贈与財産用(特例税率)を採用しています。
5 z%<x%であることを確認する

ここで[事例]相続財産 3億円・相続人 子供1人 とした場合。
1 相続税額は、上記の速算表を使って計算しますと (3億-3,600万円)×45%-2,700万円=9,180万円が相続税となります。
2 上記の速算表から限界税率は、45%となります。限界税率が適用されている部分の金額(y円)は次の算式で求まられます。

(計算式)45%={(y-110万円)×55%-640万円}/y y=7,005万円となります。

3 贈与税額は、(7,005万円-110万円)×55%-640万円=3,152.25万円 が贈与税となります。
4 贈与税の実効税率は、3,152.25万円÷7,005万円=45%
5 贈与税の実効税率<相続税の限界税率 にならなければならないので下図のとおり6,800万円までにすると贈与税の実効税率が44.7%になります。因みに6,900万円にすると相続税よりも税金が高くなってしまいます。

4.実際の贈与税と相続税の合計額をシミュレーション

中学校の数学の授業になってしまいますが、相続税と贈与税の速算表から贈与財産額が3,110万円を超えると税率が50%となってしまいます。これは、今回のケースですと相続税限界税率45%より税率が高くなってしまいます。この部分が計算上、シミュレーションした相続税と贈与税の合計が割高になってしまいます。では、どうすればいいか?答えは簡単です。限界税率と同じ税率の範囲内で贈与税を計算すればいいのです。

実際にシミュレーションしたのが下表です。今回のケースですと1,610万円から3,110万円までの年間に贈与すれば、贈与税と相続税税の合計額が8,865.5万円と最小値となりました。

まとめ

不動産の贈与をした場合には、贈与を原因とする登録免許税等の登記費用や不動産取得税が別にかかってしまいます。実務では、現金等が中心なるのではないでしょうか?

限界税率と実効税率は、節税額の計算には使えませんが全体の資産に対しての戦略を立てる場合には良いのではないでしょうか?実際に不動産所得の移転・個人から会社への不動産譲渡の場合には利用できる考え方だと思います。ただ、個別の計算は、資産税に強い税理士に相談して頂くことをお勧め致します。

本情報は、法律・税務・金融などの一般的な説明です。個別の具体的な判断や対策などは専門家(弁護士・税理士など)にご相談ください。

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