相続で揉めている理由で最近よく耳にするのは、「揉めている相手方に遺産がいくなら、分割せずほっといても構わない。」という相続人が増えてきた感じです。経済的に困っていない方は、特に相続人同士の感情のもつれから、「お金の問題ではない。あいつだけには絶対渡したくない。」という気持ちになってしまうようです。

そこで、身内で揉めたくないから、「揉めて争続になるなら、世間のために寄付してしまおう。」という選択も出てきます。
ただ、「相続や遺贈によって取得した財産で、相続税の申告期限までに国又は地方公共団体や公益を目的とする事業を行う特定の法人に寄附したものは相続税の課税対象とならない。」ことは知られていますが、会社を経営されている方で自分が死んでからも会社が商売繁盛出来るようにと遺産の一部を自身が信仰している神社へ寄附金として奉納する方もいるようです。
実は、私の父も地元の小さな神社ですが「神社の鈴[正式名称/本坪鈴(ほんつぼすず)]を寄贈し、参拝のたびに父の名前があると嬉しくなるものです。身近に形として残るから良いかもしれません。

話を戻して、ここでは「相続における寄附」と「法人税における寄附」に関して概略をまとめてみました。

目次

1.相続対策になる寄付の特例とは?
2.寄附による特例を受けるための要件とは?
3.寄附する場合の注意点とは?
4.法人税における全額経費になる寄附金とは?
5.法人税における一定の限度額まで経費なる寄附金とは?
6.法人が支出した寄附金の損金算入とは?

1.相続対策になる寄附の特例とは?

相続や遺贈で得た財産を、国や地方公共団体又は特定の公益を目的とする事業を行う特定の法人等に寄附した場合、その寄附に充てた財産は相続税の対象としない特例(所得税においては「寄附金控除」の対象)があります。これを、「国や地方公共団体又は特定の公益を目的とする事業を行う特定の法人等に寄附した場合の特例」といいます。

2.寄附による特例を受けるための要件とは?

以下3つの要件全てに該当しなければならない。
寄附した財産は、相続や遺贈でもらった財産であること。(相続や遺贈でもらったとみなされる生命保険金や退職手当金も含む。)
※香典返しに代えてする寄付は非課税にならない
②相続財産を相続税の申告書の提出期限迄に寄附すること。
③寄附した先が国や地方公共団体又は教育や科学の振興等に貢献することが著しいと認められる特定の公益を目的とする事業を行う特定の公益法人等であること。
(この「特定の公益法人等」は、政令で定められているもので、既に設立されている法人でなければならない。)
④国税庁長官の認定を受けた特定非営利活動法人(認定NPO法人)に寄附した財産であること。
⑤相続税の申告書に非課税の特例の適用を受ける旨を記載し、寄附した財産の明細書・寄附を受けた相手の証明書を添付すること。
寄附をすることで相続税の負担を不当に減少させるものでないこと

3.寄附する場合の注意点とは?

相続財産を寄附すれば、節税にはなるが、財産そのものがなくなるので、慎重に決定しなければならない。

4.法人税における全額経費になる寄附金とは?

国や、地方自治体に対して行う寄附金
【例】国立大学法人・公立大学法人に対する寄附金。共同募金会が行う共同募金に対する寄附金(赤い羽根など)

5.法人税における一定の限度額まで経費なる寄附金とは?

一定の限度額までが経費になる寄附金はさらに次の2つに分かれます。
①特定公益増進法人等に対する寄附金
【例】独立行政法人に対する寄附金・認定NPO法人に対する寄附金
②その他(一般)の寄附金
【例】宗教法人に対する寄附金・日本商工会議所に対する寄附金・神社・寺に対する寄附金・政治団体に対する寄附金

6.法人が支出した寄附金の損金算入とは?

国や地方公共団体への寄附金と指定寄附金はその全額が損金になり、それ以外の寄附金は一定の限度額までが損金に算入できます。

法人が支出した一般の寄附金については、その法人の資本金等の額、所得の金額に応じた一定の限度額までが損金に算入されます。

1 一般の寄附金の損金算入限度額
〔資本金等の額 ×12分の当期の月数×1000分の2.5+所得の金額×100分の2.5〕×4分の1=〔損金算入限度額〕

計算例 資本金等の額1,000万円、所得の金額1,500万円、1年決算法人の場合の損金算入限度額
〔1,000万円×12分の12×1000分の2.5+ 1,500万円 ×100分の2.5〕×4分の1=〔10万円〕

注:所得の金額は、支出した寄附金の額を損金に算入しないものとして計算します。

法人が支出した寄附金のうちに2~5の寄附金があるときは、それぞれ次のような取扱いになります。

2 国等に対する寄附金及び指定寄附金
国や地方公共団体に対する寄附金及び指定寄附金は、その支払った全額が損金に算入されます。

3 特定公益増進法人に対する寄附金
特定公益増進法人に対する寄附金は、次のいずれか少ない金額が損金に算入されます。

(1)特定公益増進法人に対する寄附金の合計額
(2)特別損金算入限度額
〔資本金等の額 ×12分の当期の月数×1000分の3.75+ 所得の金額 ×100分の6.25〕×2分の1

注:特定公益増進法人に対する寄附金のうち損金に算入されなかった金額は、一般の寄附金の額に含めます。

4 特定公益信託の信託財産とするために支出した金銭
特定公益信託の信託財産とするために支出した金銭は寄附金とみなされ、そのうち一定の要件を満たすもの(認定特定公益信託)は、3の寄附金に含めて損金算入額を計算します。

5 認定NPO法人等に対する寄附金
認定NPO法人等に対する寄附金(指定寄附金に該当するものを除きます。)は、3の寄附金に含めて損金算入額を計算します。

注:認定NPO法人等に対し、認定の有効期間内に支出する寄附金について適用されます。

[「国税庁HP」 参

まとめ

上記の6-1「一般の寄附金の損金算入限度額」から資本金500万円程度の中小企業は、損金算入限度額が一年で数万円。決して景気が回復しているとはいえない中で神様の力も借りたい中小企業は多いと思います。
「もう少し限度額を上げてもいいのでは・・・?」と思ったのは、私だけでしょうか?

 

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