老朽化した賃貸物件を相続するケースがあります。地方都市は、空室率が高く入居者の募集に大変苦労しています。そこで、「フリーレント賃貸物件」として入居者募集広告を見る機会が増えてきました。今回は、貸主の立場でフリーレントについて記事を書いてみました。

フリーレントとは、賃貸物件に入居後一定期間の家賃が無料になるシステムのことです。最近は、住宅だけではなく、オフィスなどの事業用物件にも多く見られるようになりました。借主側のメリットは、移転や開設に伴う初期コストが抑えられる。貸主側は、空室を解消するための手段の一つですが、賃料免除期間が過ぎた途端に退去されてしまったら貸主側の損失が出てしまいます。住居系は、入居後1~3ヶ月程度のケースが多いようですが、オフィス系の場合、免除期間が1年というケースも見受けられます。「賃貸借期間内解約」における違約金についてどのような考え方をすれば良いのでしょうか?

目次

1.標準的な賃貸借期間内の解約における違約金の額は?

2.契約残存期間の違約金の額は?


1.標準的な賃貸借期間内の解約における違約金の額は?

① 賃貸借契約期間の途中で解約すると、免除期間の賃料相当額(事業用は消費税込)の違約金が発生します。
② 即時解約の場合は、賃貸借契約上、解約の申出が3ヶ月前までとなっている場合は免除期間の賃料相当額+3ヶ月分の賃料と共益費の合計額相当額の違約金が発生します。

2.契約残存期間の違約金の額は?

事業用物件の場合は、契約期間が5年程度が多いようです。例えば、フリーレント期間が1年で免除期間が過ぎた途端に退去されてしまったら損失は大変大きい。貸主の本音は、残存期間の賃料相当額を違約金として借主に支払って欲しいはずです。

ここで、興味深い判例記事があります。
東京地方裁判所 平成8年8月22日判決確定は、貸主と借主との間で4年間の賃貸借契約を締結。保証金は分割払い。契約期間内で途中解約した場合は残存期間賃料相当額を違約金として支払う特約あり。しかし、借主は残念ながら8ヶ月目で賃料が支払えず、期間内の解約となった。判決は、「解約原因は借主にあるものの、3年2ヶ月分の賃料および共益費相当額の違約金が請求可能な約定は、借主に著しく不利であり、借主の解約の自由を極端に制限することになるため、解約時から1年分の賃料および共益費相当額の限度で有効であり、それ以上の違約金は公序良俗に反して無効と解する。」というものです。

[「不動産フォーラム 2018年1月号」より]

 

まとめ

賃貸借契約後は、貸主は新たな借主に賃貸して賃料を得ることが出来るので、仮に残存期間賃料相当額を違約金として全額得た場合、さらに次の借主から得られる賃料を含め、賃料の二重取りが許容されることになったしまうとの理由からのようです。所有しているだけで賃料が入ってくる時代ではありません。常にアンテナをはって情報収集をして専門家を交えて分析し、迅速に実行していくことが大事なのではないでしょうか!

 

 

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